[再生医療]NK細胞療法
NK細胞について
NK細胞療法は、ご自身のNK細胞の働きを活かしたがん免疫療法の一つです。
NK細胞はリンパ球に含まれる免疫細胞の一つで、常に異物を攻撃する能力を備えているため「ナチュラルキラー(NK)細胞」と呼ばれています。NK細胞は、がん細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞を発見すると、単独で直ちに攻撃することができます。T細胞やB細胞は、抗原提示細胞から異常な細胞の情報をもらい(抗原感作)、活性化してからでなければ攻撃することができません。NK細胞は抗原感作の必要が無く、常時異常細胞を攻撃できます。この特性により、NK細胞はがんの発症や感染症の防御において重要な役割を果たしています。
NK細胞療法とは
患者様から採取した血液中に存在するNK細胞を取り出し、細胞を攻撃する能力を高めてから体内に戻すことによって、がんを攻撃する治療法です。
採血
遠心
培養開始
培地内でNK細胞を増やす
がん細胞と闘うNK細胞を増殖させる。
患者様に点滴で投与
NK細胞療法の特徴
●体内にあるNK細胞は、がん細胞を発見し、攻撃する能力を持っています。このNK細胞を増殖・活性化させることで、がんに対して強い攻撃力を発揮します。
●NK細胞療法は、増殖・活性化したNK細胞が体全体を巡るため、がんの再発や転移予防にも繋がります。
●免疫細胞の中でもがん細胞を破壊する能力の高いNK細胞を使用するため、比較的短期間に効果が出やすいと言われています。
※ただし効果の発現には個人差があります。
●患者様ご自身のリンパ球を使用するため、副作用はほとんどありません。体への負担が少ない治療と言えます。
●ほぼ全てのがん治療(手術、抗がん剤、放射線療法、緩和医療など)との併用が可能です。
「樹状細胞ワクチン療法」との併用について
NK細胞は、MHC分子を発現していない細胞を攻撃する性格を持つことから、MHC分子を発現していないがん細胞を見つけると直ちに排除します。ところが、がん細胞の中にはMHC分子を発現するがん細胞もあり、そのような細胞はNK細胞では排除することができません。しかし、がん細胞に発現しているMHC分子はがんの目印を提示しているものがあり、この場合にはT細胞の攻撃対象となります。
NK細胞療法と樹状細胞ワクチン療法を併用することで、MHC分子を発現していないがん細胞及びMHD分子を発現しているがん細胞の両方を排除することが可能となるため、相加・相乗効果が期待できます。
治療概要
本治療は自由診療です。
NK細胞療法の流れ
1. 血液検査
患者様の全身状態や感染症の有無を確認するため、血液を採取し検査を行います。
2. 末梢血採取
活性化したNK 細胞を作製するため、採血を行います。
3. NK細胞の作製
末梢血採取により得られたNK細胞に対し、IL-2やIL-15等のサイトカインを用いて刺激し、活性化されたNK細胞を作製します(IL-2等のサイトカインは、健常人でも体の中に存在する物質です)。
4. NK細胞の投与
NK細胞は、末梢の静脈より約30分程度かけて点滴(投与)します。2~3週間間隔を目安に行いますが、患者様のご病状等によって、それ以上の間隔で行う場合もあります。
治療期間、回数
患者様の病態、症状によって変わりますので、診察、検査、をお受けいただき、決定しております。
費用(自由診療)
患者様の病態、症状によって治療内容が変わりますので、治療方針決定後にお伝えしております。ご了承ください。
副作用・リスク
大学研究機関等で行われた研究では、本療法の副作用は軽度であり、発熱以外には殆ど認められないことが報告されています。
有効性について
本療法は、腎細胞がん、皮膚がん(悪性黒色腫)をはじめとして、幅広いがん種に対して行われた報告があり、乳がんや卵巣がんに対する有効性について報告がされています(Cytotherapy. 2011.13:98.)。また、抗がん剤治療を受けた後に進行した肺がん(非小細胞肺がん)に対して、抗がん剤(ドセタキセル)と本療法を併用することにより、約半数で3か月間以上がんが悪化せず、約10%でがんの消失もしくは縮小を認めた報告もされています(Anticancer Res. 2013.33:2115.)。
当院においても、進行がんの治療、あるいはがんの手術後の再発防止と共に、患者様の生活の質(QOLQOL)の向上が期待されています。また、まだ有効性が確立されているわけではありませんが、健康な人に対して実施する本療法には、免疫力向上によるがん予防などの効果が期待されています。
再生医療は、厚生労働省への届出が受理された施設において、許可を得た医師のみが提供できます。当院は、再生医療法(再生医療等の安全性確保等に関する法律)により、第三種 再生医療等提供計画を提出し、計画番号を取得した医療施設です。