がん免疫療法
どうして「がん」になるのか?
私たちの体の中では毎日数千個程度のがん細胞が生まれています。このがん細胞が増殖し、疾患としてのがんにならないのは毎日生まれたがん細胞を免疫細胞が排除してくれているからです。この免疫の働きが何らかの原因で機能しなくなったときに、がん細胞は分裂増殖し、大きな塊となり、がんという病気になります。「免疫療法」はヒトが本来持ち合わせているがんに抗う力(免疫)の働きを元に戻したり、より高めたりすることで、がんを小さくするあるいは大きくなるのを遅くすることを狙った治療となります。
免疫とは
免疫とは、体の中に侵入した異物を排除する働きのことで、誰もが生まれながらに備えている能力です。
排除にあたる主体によって「細胞性免疫」と「液性免疫」に区分されます。「細胞性免疫」は血液中の細胞が働く免疫で、「液性免疫」は血液中の液体成分(抗体)が働く免疫です。異物の種類によって、これらの免疫が使い分けられており、「細胞性免疫」はがん細胞などの体の中で生じた異物の排除、「液性免疫」は病原体など外部から侵入した異物の排除を担います。「細胞性免疫」ではTh1細胞(1型ヘルパーT細胞)が、「液性免疫」ではTh2細胞(2型ヘルパーT細胞)が司令塔として働きます。Th1細胞とTh2細胞はお互いに働きを抑制し合うことで、うまくバランスをとっています。
また、免疫応答は異物の排除が終わると不要となるため、それを収束させる働きもあり、これは制御性T細胞により担われています。
“第4のがん治療”がん免疫療法とは
外科治療
(手術)
化学療法
放射線治療
第4のがん治療
免疫療法
現在、がんに対して行われる治療には、外科治療(手術)、化学療法(分子標的薬を含む抗がん剤による治療)、放射線治療の3つがあり、これらを総称して「がんの3大療法」と呼ばれています。
近年、この3大療法に加えて、“第4のがん治療”として注目されているのが免疫療法(イムノケア)です。この能力を高めることで、改善効果を図るのが「がん免疫療法」です。
ただし、がん細胞は自身を攻撃する「細胞性免疫」の働きを抑えるために、Th2細胞や抑制性T細胞の働きを強めることで、免疫からの攻撃を防いでいます。がん治療が難しい第一の理由がここにあります。
がん免疫療法(イムノケア)は、細胞性免疫を高め、液性免疫を抑える
がん免疫療法では、医薬品と免疫賦活食品とを組み合わせることにより、「細胞性免疫」の司令塔であるTh1細胞の機能を高めると共に、Th2細胞の働きを抑制します。これにより、がんを大きくさせない、あるいは縮小させるといった治療効果が期待できます。
近年では、がん細胞が免疫回避する様々な仕組みが解明され、それらに対する治療法が開発されてきており、免疫療法は大きく進化しています。
当院のがん免疫療法の特徴
がん免疫療法といっても、様々な種類の治療法があります。当院では個々の患者様に合わせたアプローチを共に模索し、提供してまいります。
副作用が少ない治療法
免疫療法は患者様自身の免疫細胞を体外において科学的に培養し、増殖した免疫細胞を患者様へ戻しますので、副作用が少なく、重篤な副作用が起きにくいというメリットがあります。体力が少ない方や、高齢者の方にも治療が可能です。
3大療法(外科治療、化学療法、放射線療法)で対応が難しいがんへの効果
手術療法や放射線療法は、全身に転移したがんには対応できませんが、免疫療法は一部のがんを除き基本的にほとんどのがんに適応している治療法です。
3大治療の効果が出にくくなったケースに対しても、効果を期待できる場合があります。また、がん細胞の発生箇所や進行度に関係なく治療を受けられるのも特徴の一つです。
再発がん・転移がんに対する予防・治療
免疫療法は、がんの治療後に体内に残った小さいがん細胞にも攻撃することができ、がんの再発予防にも効果的です。また、免疫療法は全身に効果が及ぶため転移したがんに対しても有効です。
標準治療との併用による治療効果の向上
免疫療法は、手術療法や放射線療法、薬物療法(抗がん剤治療)などの標準治療との併用することができます。患者様に合わせて最適な治療法を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。