[再生医療]WT1樹状細胞ワクチン療法
樹状細胞とは
樹状細胞ワクチン療法は、ご自身の樹状細胞の働きを活かしたがん免疫療法の一つです。
樹状細胞は、免疫細胞の一部で、リンパ球にがんの目印を教えてがんを攻撃させる、いわゆる抗腫瘍免疫における「司令官」の役割を担っています。しかしながら、がん細胞が増えすぎると、樹状細胞の働きが追いつかなくなることもあり、その結果、がん細胞が増殖してしまいます。 その問題を解決するため、樹状細胞を体外で培養し、増やしてから患者様の体内に戻す「樹状細胞ワクチン療法」が開発されました。
樹状細胞ワクチン療法のしくみ
樹状細胞ワクチン療法は、ご自身のがん組織や、人工的に作製したがんの特徴を持つ物質(がん抗原)を用いて、患者様の樹状細胞にがんの目印を認識させてから体内に戻す治療です。
人工がん抗原樹状細胞ワクチン療法
この治療の特徴
●人工的に合成したがんの目印(人工がん抗原)を使用した、がんワクチン治療です。
●人工がん抗原の型が患者様の白血球の血液型に適合する場合に対象となります。
●ほぼ全てのがん治療(手術、抗がん剤、放射線療法、緩和医療など)と併用が可能です。
人工がん抗原「WT1ペプチド」について
がんの目印を樹状細胞へ覚えさせるためには、手術などで取り出した患者様のがん組織が必要になりますが、既に手術を終えている場合や、病状などにより手術が困難な場合など、組織を採取できる方が限られていることが課題でした。
そこで考え出されたのが、多くのがん種で高頻度に発現しているがんの目印を人工的に合成し(人工がん抗原)、それを樹状細胞に覚えこませる方法です。そして、この人工がん抗原の中で注目を集めているのが、「WT1ペプチド」です。このがん抗原は、ほとんどの固形がんおよび白血病でも確認されているがん抗原であり、多くの患者様に治療の提供が可能になりました。
各がん種におけるWT1の発現率
出典:Jpn J Clin Oncol 2010:10:40(5)377-387(改変)
主なリスク、副作用について
採血時はめまいや吐き気、皮下出血、成分採血時は口の周りや手のしびれ等の症状が発生する場合があります。
投与時は発熱や局所の発赤腫脹、また稀ですが水泡形成等の症状が発生する場合があります。
自己がん組織樹状細胞ワクチン療法
この治療の特徴
●手術でご自身のがん組織を採取し、それをがんの目印として使用する樹状細胞ワクチン療法です。
●手術でがん組織を採取可能な方が対象になります。
●ほぼ全てのがん治療(手術、抗がん剤、放射線療法、緩和医療など)との併用が可能です。
自己がん組織の採取について
自己がん組織としては、薬剤処理を行う前の、手術後間もない新鮮な状態のものが必要となります。
そのため、主治医や執刀医にご協力頂き、手術直後に当方指定の容器にがん組織を採取し、手術後24時間以内に当クリニックまでご持参頂く必要があります。詳細につきましては、事前にお問い合わせください。
主なリスク、副作用について
採血時はめまいや吐き気、皮下出血、成分採血時は口の周りや手のしびれ等の症状が発生する場合があります。
投与時は発熱や局所の発赤腫脹、また稀ですが水泡形成等の症状が発生する場合があります。
治療概要
本治療は自由診療です。
樹状細胞ワクチン療法の流れ
1. 原料の採取
樹状細胞ワクチン作製に必要な血液細胞を得るために、成分採血(アフェレーシス)または全血採血を行います。
2. 樹状細胞ワクチンの作製
成分採血または全血採血により採取された単球に対し、GM-CSF やIL-4 といったサイトカイン等を用いて刺激し、樹状細胞ワクチンを作製します(GM-CSF やIL-4 、サイトカイン等は、健常人でも体の中に存在する物質です)。
3.樹状細胞ワクチンの投与
作製された樹状細胞ワクチンは、足の付根、首、わき等、リンパ節に近い場所に2~3 週間間隔を目安とし合計5~7 回(全血採血の場合、3回程度)皮内もしくは皮下注射します。
治療期間、回数
患者様の病態、症状によって変わりますので、診察、検査、をお受けいただき、決定しております。
費用(自由診療)
患者様の病態、症状によって治療内容が変わりますので、治療方針決定後にお伝えしております。ご了承ください。
有効性について
本療法は多くの施設で研究が行われており、2010年4月30日にアメリカの政府機関であるFDA(Food and Drug Administration)から樹状細胞等を用いた「前立腺がん」治療剤の市販が許可されました。国内では和歌山県立医科大学において膵臓がんに対する治験が進められております。
また、切除不能な進行した膵臓がん(※1)や進行した非小細胞肺がん(※2)、切除不能な進行および再発した胆道がん(※3)、再発した卵巣がん(※4)、局所再発した胃がん(※5)等において、腫瘍マーカーの減少や延命効果が期待できる内容の報告をしています。一方、まだその有効性が確立されていない面があることも事実です。
※1)Cancer Immunology,Immunotherary. 2014.63:797.
※2)European Journal of Cancer. 2013.49:852.
※3)Journal of Gastrointestinal Surgery. 2013.17:1609.
※4) Journal of Ovarian Reseach. 2014.7:48.
※5)World Journal of Surgical Oncology. 2014.12:390.
再生医療は、厚生労働省への届出が受理された施設において、許可を得た医師のみが提供できます。当院は、再生医療法(再生医療等の安全性確保等に関する法律)により、第三種 再生医療等提供計画を提出し、計画番号を取得した医療施設です。